より良い取締役会をつくるために 長期的な取締役後継者計画

DEISuccession PlanningBoard Composition and SuccessionBoard and CEO AdvisoryBoard Director and Chair SearchBoard Effectiveness
Article Icon
10月 17, 2019
5 min read
DEISuccession PlanningBoard Composition and SuccessionBoard and CEO AdvisoryBoard Director and Chair SearchBoard Effectiveness
エグゼクティブサマリー
健全な取締役会をつくるためには慎重に検討を重ねて継承計画を策定することが極めて重要です。計画づくりは独立取締役のリーダーシップのもとで進める必要がありますが、外部のアドバイザーに支援を仰ぐ、あるいは策定の作業を主導してもらうという方法もあり得ます。いずれにしても大切なことは取締役会全体がこのプロセスにコミットし、これをきっかけとして生まれる対話にオープンに向き合うということです。
rra-advice-for-CHRO.jpg

 

取締役会に空席が生じ、後任を決めなければならなくなったとき、急いで計画をつくり「自分たちが知っている人」の中から候補者を選んでしまう。こうした状況に取締役はよく陥りがちであり、実際にこのような形で後継者が決まることはごく当たり前になっています。

近年、経営幹部の採用方法については改善が見られ、各企業は慎重に検討を重ねてその会社で長期的な成功を実現できる能力を持った人材を選び、採用するようになっています。今、これと同じ変化が取締役の選任についても起こりつつあります。最近では、取締役の候補者探しを進めるにあたり、取締役会の現在の構成をありのままに分析したうえで将来のニーズを特定し、長期的な取締役採用戦略をつくるというケースがよく見られるようになっています。

活性化に成功した取締役会の典型的な例を見ると、まず取締役会の構成を分析することから取り組みを始めています。戦略的な計画をつくるプロセスは指名・ガバナンス委員会(以降、指名委員会)が主導する次の4 つの主要な活動で構成されます。

Director1.jpg

正しいことを間違った方法で進めてしまう

長期的な取締役後継者計画を立てることには大きなメリットがありますが、さまざまな形で進め方を誤り、結果的に取締役会や会社、株主の利益を損なうことがあります。そうした思わぬ結果を招く誤ったアプローチの中から一般によく見られる4 つを取り上げます。
 

Director2.jpg

取締役会の構成について取締役会が分析を始めるにあたっては、全取締役の参加を得て、オープンですべての取締役に開かれたプロセスとすることが大切です。顧問弁護士や別の役員がどこか遠くから進めることができるようなものではありません。取締役全員がそのプロセスと分析にコミットしていなければなりません。

同時に、取締役が自分自身の適性を過大評価することがないようにすることも大切です。ある事柄について新しい知識を持ち合わせていると思い込んでいるが実際はそれほどでもない、という場合や、20 年前にCFO を務めたことがあるため今の現役のCFO と変わらないレベルにいると信じている、というケースがよくあります。このような事態を防ぐため、各評価指標について明確な基準を定めておく必要があります。最終的な評価と適性についての判断は指名委員会が決定します。

最後に、おそらく最も重要な点ですが、このプロセスを進める過程で取締役会は難しい話題を避けて通ることはできません。ある現職の取締役には、今後、取締役会でこれといった役割がない、また別の取締役は、適正がある、必要な能力を持っている、と自分では信じていても実際は違っている、というようなことがあります。取締役会のリーダー(非業務執行議長もしくは筆頭取締役)または指名委員会の委員長は進んで各取締役と向き合い、一部の取締役と退任の道筋について相談することも含め、オープンに、正直に、率直に対話する必要があります。

このプロセスと結果の責任は取締役会が負わなければなりませんが、第三者をアドバイザーとして起用することはいくつかの難しい問題に対応するうえで助けになるでしょう。期待できるメリットの一つは、このプロセスに必要な客観性と厳密さがもたらされることです。

取締役会の構成分析がもたらすメリット

取締役会の構成について厳密な分析を行なうことによって次のようなさまざまな価値を生みだすことができます。
 

Director3.jpg

健全な取締役会をつくるためには慎重に検討を重ねて継承計画を策定することが極めて重要です。計画づくりは独立取締役のリーダーシップのもとで進める必要がありますが、外部のアドバイザーに支援を仰ぐ、あるいは策定の作業を主導してもらうという方法もあり得ます。いずれにしても大切なことは取締役会全体がこのプロセスにコミットし、これをきっかけとして生まれる対話にオープンに向き合うということです。

Director4.jpg
Director5.jpg

著者

Anthony Goodman 当社のBoard and CEO Advisory Partnersのシニアメンバー。拠点はボストン。

PJ Neal 当社のCenter for Leadership Insight担当。拠点はボストン。

Footnotes:
1. 「良い会社から素晴らしい会社になるための改革を始めた経営者たちは、まずバスの行先を決めてそれから人を乗せるというようなことはしなかった。そうではなく、まずバスに乗るべき人を乗せて(そして乗るべきでない人をバスから降ろして)それからバスの行先を考えた。」  Jim Collins. Good to Great: Why Some Companies Make the Leap ... and Others Don’t. New York: HarperCollins, 2001.
2. Rusty O’Kelley, Anthony Goodman, Justus O’Brien, and PJ Neal. What the Board Wants to Know: Answers to 12 Common Questions. Russell Reynolds Associates: New York, 2019. https://www.russellreynolds.com/insights/thought-leadership/what-the-board-wants-to-know-answersto-12-common-questions.