社内の人材(タレント)を無視して、競合他社を後押し?

CEO Succession
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Dean Stamoulis
4月 29, 2022
5 min read
CEO Succession
要旨
競合他社に差をつけられることは、取締役会が最も避けたいことです。しかし、急進的な変化を求めるあまり、将来のリーダーを探す際に社内の人材(タレント)を見落とすという、不用意な行動をとってしまうことがあります。
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取締役会が最も避けたいことは、競合他社に何らかの優位性を与えることです。しかし、多くの取締役会は、将来のリーダーを探す際に社内の人材(タレント)を見落とすという、不用意な行動をとってしまうことがあります。

社外からリーダーを採用することは、意欲的な従業員に対して「ここでの昇進の選択肢は限られている」というメッセージを送ることになります。そして、その影響は、優秀な社員を失うという痛手にとどまらず、最終的な収益にも影響します。

将来的なキャリア形成の機会を失うことによる離職は、金銭的なインパクトと経験やスキルの喪失の両面から、大きな代償を伴います。また、その社員が組織内の有力なリーダーや人物、つまり期待の新星や経営陣、CxOである場合、そのコストは飛躍的に増大します。

CEOの後継者を探す際に取締役会が社内の人材を見落としてしまう理由

取締役会が新CEOを探す際に、社内の人材を見落とす理由はいくつかあります。例えば、変化や変革の取り組みは、外部の人材が主導するのが最善であるという考え方が一般的であることです。

外部の候補者は、多様な知識と経験が豊富で、既存の感情的なつながりがないため、より効果的であると見なされることがよくあります。 特に後者の場合、既存の人間関係や今まで投資してきたことによって思考が左右されることがないため、より困難な戦略面・人材面での決断を下せる可能性があるのです。

また、外部の候補者は、過去の実績が明確であるため、「あの会社で活躍したのだから、うちでも活躍してくれるに違いない!」と、比較的安全な賭けとみなされるかもしれません。(もちろん、同じ会社は二つとないし、「過去の実績は将来の結果を示すものではない」のですが。)

しかし、長所を挙げれば、必ず短所も出てきます。

社内人材を見落とすことの危険性: 怒り、萎縮、不要な注意

取締役会が意図しているかどうかにかかわらず、重要な役職に外部から採用することは、強いメッセージを送ることになります。それは、取締役会が社内の候補者に十分な自信を持っていないこと、あるいは抜本的な方向転換が必要だと考えていることを意味しています。

社外の人材を優先させると、以下のような結果になることがあります。

  • 社内の人材が評価されず見下されていると感じ、退職して競合他社に移ってしまいます。
  • 従業員の士気が低下し、社内では有意義なキャリアアップが望めないと思い込んでしまいます。
  • 株主の信頼が得られなくなります。外部からの支援の必要性は、不確実性や内部に問題がある兆候と見なされる可能性があります。これは、「私たちは間違った方向に進んでいた」と言っているのと同じです。

もちろん、変革に問題があるわけではありません。歴史的な傾向から見ても、何十年にもわたって破壊的なテクノロジーやゴールポストが変化する中で一貫して繁栄してきた企業は、方向転換して新しいビジネスパラダイムに適応することができる(そして、それを望む)企業であることを示しています。

しかし、変革の必要性があるからといって、外部のリーダーを連れてくる必要はありません。 実際、企業は多くの場合、社内のチェンジメーカー、つまり「既成概念に囚われない(outside-thinkingの)インサイダー」によって、最高の成果を上げることができるのです。

社内チェンジメーカーの事例

組織の内部から変化を起こすのは難しい、それは事実です。「いつも決まった方法で行われてきた」場合には、その難度は増します。

しかし、組織内には常に先見の明のある人々(ビジョナリー)が存在します。より良い変化への期待に胸を膨らませ、それを実現しようとする人たちです。彼らは、物事をどのように改善できるかというビジョンを持ち、それを実現するための意志と意欲を持ち、潮流を把握し、変化するベストプラクティスやイデオロギーの変化の先を行く人たちなのです。

これらは貴社内ののチェンジメーカーです。 既成概念に囚われないインサイダーです。

彼らはすでに権限を有しているかもしれませんし、社内の期待の新星かもしれません。チャンスさえあれば、彼らは組織を変えることができます。 そして、既存の人間関係と確立された評判により、外部からの採用よりもステークホルダーを味方につやすい場合が多いのです。

また、既成概念に囚われないインサイダーは、企業文化のニュアンス、ビジネスモデル、そして、どこから変化を起こせばよいかを理解する必要がないため、迅速に効果を発揮する可能性が高くなります。また、既成概念に囚われない既存のCxOたちは、組織がどこで変化を試す余裕があるかをよりよく理解しています。すなわち、組織のどこで収益が上がっているかを把握しており、真の長期的な変革に向けて資金を確保するために、プロセス全体を通じて何を守るべきかを知っているのです。

社内のスーパースターの支援

では、どのようにすれば、このようなスーパースターを見つけ、支援することができるのでしょうか。

それは、優秀な人材を探し出し、育成するための社内の人材開発・育成プロセスを整備することから始まります。そのためには、CEOの後継者計画を導入することが有効です。明確な後継者計画のプロセスを持つことは、会社が従業員とそのキャリアに投資し、明確な方向に向かっているというメッセージを送ることになります。

また、会社を成功に導き、予期せぬ波乱から会社を守ることにもつながります。サクセッション・プランニングを行うことで、突然の経営陣の交代の必要性が生じた場合でも、会社は選択肢を用意しておくことができるのです。

今後複数年間、組織を支える CEO の後継者計画を効果的に作成するためには、以下のことが必要です。

  • 貴社のCEOに求められる人材要件(パーソナリティ、スキル、経歴、優先事項など)をを作成する。
  • 現在および予想される将来の企業ニーズにマッチする社内候補者を選定する。
  • 候補者が成功するために必要な経験とノウハウを身につけられるよう、育成の道筋をつける。
  • トレーニングや育成が企業の進化するニーズに合致しているか、常に見直す。
  • 最終的にCEOに選ばれなかった候補者の離職を防ぐための計画を用意する。

企業の後継者計画には、社外からの候補者も間違いなく含まれますが、理想的なのは、最後の手段として、あるいは抜本的な改革が必要な場合に限られます。先見の明のある企業にとって、後継者計画は主に社内候補を前提とすべきものです。

 

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貴社を将来にわたって支える、既成概念に囚われない思考を持った社内リーダー候補のパイプラインを開発する方法をお知りになりたいと思いませんか?